四天王寺前夕陽ヶ丘

阪口楼

私どもの会社の調理師社員と表記の店を訪問。店の前で待ち合わせをしたんだけどかなりわからないところに位置しているため茶臼山のラブホテル街をひたすら一人で歩き回った。

2013-11-25 20.14.26

ラブホテルを左右に見ながらお店に到着。なんとも立派な門構えの料亭である。聞けばこのお店は300年以上の歴史のある普茶料理の専門店で、中国から伝来した精進料理といったものらしい。もちろん長年にわたる日本の文化の中でちゃんとした和食になっている。私どもも大阪で仏事料理専門店を5店舗やっておりその担当調理師からこの店でお勉強したいと言うおねだりがあり本日の訪問に至る。

普茶料理は京都の万福寺の僧・隠元和尚が江戸時代に黄檗宗とともに伝えたといわれ生もの(動物性タンパク質)を一切省いて植物性食品を使った料理。「普茶」とは「普(あまね)く衆人に茶を施す」という意味で本来は大皿で取り分けていただく料理らしい。(能書きから借用)いわゆる長崎の卓袱のようなものかと思っていたが料理人の腕とセンスの良さで料亭仕立ての会席風の献立で供された。

2013-11-25 18.43.22

麻腐(マブ)はこの日はスタンダードな胡麻豆腐。しかしながら胡麻の香りと粘りが素晴しい。付け出し汁の塩梅も素晴しい。この店の出汁はかつおを一切使わずに昆布と椎茸とかんぴょうでとると聞いたことがある。このデフォルトの胡麻豆腐を頂いただけでこちらのお店の実力がよくわかる。

2013-11-25 18.43.35

特菜(トクサイ)は湯葉の長芋巻き。濃厚でトロっとした風味の湯葉の中にシャキシャキした食感の長芋がとってもいい感じ。付け合わせはブロッコリーの胡麻和え。

2013-11-25 18.54.11

「澄免」(スメ)は精進出汁仕立て。鰹節を使わないのにしっかりとコクのある味。塩加減も強くないしこれには驚いた。胡瓜のようなのはズッキーニ。美味しさの秘密は白ネギを炒めて甘味をしっかり出し柔らかいとこだけを食べやすいようにして入れている。コクがあって素晴しいお味。海苔を練り込んだ白玉団子も秀逸。

2013-11-25 19.11.32

窓からは天王寺公園が見えて借景も素晴しい。その横には川底池も見えて上品な池畔の佇まいを醸し出す。こちらのお店は明治十年で創業で南地大和家の分家として今日に至る。はんなりとした上方文化の色が料理や店の設えの細部に残る。器はすべて輪島塗で塗り替えをして90年は使っていると言っておられた。

2013-11-25 19.12.01

温菜は茄子の赤味噌田楽。茄子と油の相性がいい。濃厚な味噌がかなり美味しい。ぶぶあられと柚子の風味もよく計算されたあしらえとなっている。

2013-11-25 19.17.33

笋羹(シュンカン)は懐石でいう八寸。かなり手が込んでて素晴しい内容。香ばしさが他店とまったく異なる焼き茄子の胡麻クリーム、シャキシャキした食感と火入れがお見事の蓮根の有馬煮。百合根を裏ごして団子にして作った柿。かぼちゃを裏ごして味を入れて薄揚げで巻いた信太巻。菊菜と栗の白和え。梅の甘露煮は瓶詰めのような見た目であるがしっかりと赤紫蘇を使って柔らかくかつ甘味を抑えて含め煮にした佳作。

2013-11-25 19.21.34

柿の葉に包まれた寿司は赤蕪が口直しにとてもいい。しみじみ「美味しいねえ」と口に出る。

2013-11-25 19.33.10

「油磁」は揚げもの。手前は筒ゴボウをくりぬいて中に高野豆腐の炊いたものを詰めたもの。その横は火入れが見事な三度豆と長芋の湯葉巻、プチトマトにアボガドを詰めたファルシ仕立て、舞茸、里芋をミディアムに炊き上げて大葉で包んだものも驚くほど美味しかった。

2013-11-25 19.42.39

雲片は野菜の切れ端を炒め葛寄せにしたものらしい。この日は京別巻(ロールキャベツ)中身は玉ねぎや銀杏、生麩、椎茸。。しっかりとついた味が素晴しい。。何を食しても感激の連続。

2013-11-25 19.54.31

食事は白ご飯と合わせ味噌仕立てのみそ汁。具は薄揚げと巻麩。塩梅は完璧。

2013-11-25 20.00.58

最後の「甘味」はリンゴのゼリーに洋梨の刻んだものをあわせたもの。上にキウイと黒豆とミントとクコの実。動物性タンパク質を一切使っていないのに満腹で大満足。

2013-11-25 20.17.38

同伴者はこのコースの価格8000円くらいと思っていたようで実際は4500円。税サ別でコスパも素晴しい。天王寺公園の借景があってこの価格であれば再訪したいと思った。お酒を飲んで一人7000円あれば充分。ぐるなびクーポンで10人いくと一人サービスになるらしい。とってもいい勉強になりました。

帰り道に天守閣のあるラブホテルとハルカスを撮る。なかなかいいアングルと自画自賛。

2013-11-25 20.18.55

この天守閣のあるラブホテルの前には二宮金次郎先生の象がある。。この店の玄関を入るまでにラブホ街を通らないといけないのがネック・・・というかそれもギャップがあって面白いかもしれないね。。

大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1-30
Tel:06-6771-3522


カテゴリー 四天王寺前夕陽ヶ丘, 天王寺/阿倍野, 和食 |

まさる 6月

数ヶ月ぶりのまさるさん訪問。。

もう15年くらい通っているのになにげに店の前を通り過ぎてしまう。それだけ目立たない外観。同伴いただいた大阪ナンバーワン焼き肉店主も「ここはひとりでは来れんわ」とのたまう。店はカウンターのみ9席。店主の顔面がいかついとこのブログで毎回紹介するとその顔見たさに客が訪れると聞き及ぶ。小さなお店なので当然予約は必須。

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生ビールで乾杯をしてまずはお造りの盛り合わせ。美しすぎて手が出ない状態である。白身は高級魚のアコウ。剣先イカに北海道産のウニを乗せたもの。シマアジに皮目を炙ったカマス。一見、鱧のように見える皮目を炙った穴子。赤貝もいい香り。。。ワサビはもちろん本ワサビ。これだけでノックアウト状態。。。

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続いて巨大な舞鶴で獲れた鳥貝をさっと炙ってもらう。炙ることで甘みが倍増。。コリコリしてシャキシャキして目が回るくらい美味しい。。美味しい食材は見た目も美しい。

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店主渾身の一夜干しを所望。この日は大羽イワシ。脂ののりも最高。。。アテも普通以上に美味しいのでいつも食べ過ぎてしまう。この日のイワシは推定30センチくらいの大きさ。旨味凝縮アミノ酸満載。。ここで麦焼酎の水割りを所望する。

ここから握っていただく。

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最初は鱚。6月の鱚は絵に描いたものでも食べよ。と昔から言われる。軽く昆布〆にして中には大葉を射込む。。口の中でふわりとシャリがほどけて思わず「おいしい!」と口に出る。

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続いてこの店オリジナルの鯵のなめろう。かなり新鮮な鯵を使っているのは口に入れればすぐわかる。。。酒・醤油・ネギ・スダチで味を整える。手を入れることで新鮮さが引き立つ。

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「アマテカレイ」はマコカレイの関西式の呼び名で同じ白身のヒラメとは違ったねっとりしてもちっとした舌触りと身にしっかりと脂が乗っていて身はひたすら甘くて若干の熟成感も感じられふくよかな食感。見た目も実に艶っぽい。。

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コハダは一枚漬けなんだけどしっかりと締められていてこれはこれでかなり美味しい。ビジュアルも美しくミニカーのようで走り出しそうな感じ。6月末には毎年シンコが登場。必殺の7枚付けは必見の価値あり。

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久しぶりに食したマナガツオ。。劣化が早いので滅多に生では食さない。関西より東では獲れないので関西ならではのレアネタ。口に入れたとたん溶ける。。融点が限りなく低いのであろう。これは本日のメガヒット。。。うっとりとする旨さ。。

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さより昆布締めはかなり分厚い細魚がひねられて握られる。繊細なんだけど豪快で昆布でしめることで確実に魚が美味しくなっている。。

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きんきは皮目を軽く炙って肝と芽ネギを乗せたもの。。皮の部分の脂分がとてもいい。握られた寿司はシャリに空気がたっぷり入っているので皿に置かれた瞬間少し沈み込む。口に入れるとはらりとほどける。。。。とにかく美し過ぎる寿司である。

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この店のスペシャリティーの車エビ。。シャリとの間にエビのミソを挟んでいる。まったりとコクがあって煮切りのせいで更に海老の甘みが引き立っている。食べやすさはもちろんこのビジュアルはまさに芸術。シンプルでかつ深遠なるセンスを持つ吉村氏のなせる技である。。

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毛ガニも今が旬。。。味噌と一緒に頂くと悶絶の旨さ。。甘過ぎる身に涙がちょちょぎれる。。

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アワビは大振りのものを柔らかく炊き込む。いつも好物のエンペラの部分を選んで切り付けてくれる。ぐにゅぐにゅして柔らかで味がとっても深い。ディスイズコラーゲン。。。

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煮ハマもこの店のスペシャリティ。伝統的な江戸前とは違ってさっとボイルして出汁につけ込む。かなりのレア感と磯の香が秀逸。身の大きさにもいつも驚く。この店のハマグリよりおいしいものは今まで食べたことがない。

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ウニは刺身の分と違い淡路産。ミョウバンを使っていないので少し崩れているが甘みが強烈。よく似たものが最近あちこちで出回っているがこの店のは粒が大きく最高の物を仕入れているので別格。。ご主人曰く史上最高のウニである。

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あさりの握りも珍しい。。寿司ネタになるくらいのものなのでかなり大きなサイズであることは見て取れる。

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目の前に獺祭の濁り酒があったので所望する。。

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ウナギも店主独特の反則技で炙ったウナギで寿司米を包み、それを焼き海苔で巻いて出される。鰻が鰻屋よりもうまいという掟破りの反則技。この店子供は連れて行かない方がいい。。店主の顔が恐すぎて夢に出て来る可能性あり。。

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〆は野菜やエビや山芋などいろんなものが入った袱紗焼き。味の宝石箱とはこのことなり。コースはこれで終了なんだけどあと10種類以上はネタを用意されている。しかし食べ始めるときりがなくお腹が破裂するまで食してしまうのでこの辺で終了とする。

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追加でかんぴょうと三つ葉の寿司のみ頂く。。お腹いっぱいごちそうさまでした。

ここは現在私が最も好きな寿司店である。3ヶ月に一度死ぬまで通い続けたいと思っている。。。

 

大阪市浪速区下寺2-3-10

TEL:06-6649-7227
営業時間:平日 17:00~翌2:00 日祝 17:00~23:00
定休日:水曜日

まさる寿司 / 四天王寺前夕陽ケ丘駅恵美須町駅難波駅(南海)


カテゴリー 恵美須町, 四天王寺前夕陽ヶ丘, 寿司 |

まさる

数ヶ月ぶりに表記の寿司店を訪問。最近メディア等で取材されまくりなので予約の取れないお店となってしまっている。しかしながらこの日はすんなりと予約が出来た。

場所は夕陽丘の高速の入り口のガソリンスタンドを南に入ったところ。カウンターのみ9席の小体なお店。

ファザードは暖簾がなく表札だけなので見落としてしまう。普通に見ると絶対寿司屋と気づかない。

2013-01-17 19.27.18

 

ビールを頂きながらまずはお造りの盛り合わせ。12時の場所から時計回りに脂のりのりのブリ、皮を炙った太刀魚、これも皮を炙った穴子は脂分たっぷり。赤貝にヒラメ。真ん中はハリイカの雲丹のせ。。。

これだけでも日本酒が3合頂ける内容とクオリティー。このお店も季節が変わるたびにお邪魔しているが15年は通っている記憶がある。

今や自分も喜んで一緒にいく相手も必ず喜んで頂ける私のmost favoriteな店。*ネイティブはmost favoriteという表現は使わないって聞いたことがあるな・・・ 私にとって大切な店なので大切な方としか一緒に訪問はしない。

2013-01-17 19.39.40

酒のアテに白子のポン酢。どこにでもあるものだがどこよりも美味しく作るのがこの店流。食材がかなり上質。目利きが素晴らしい。

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続いてこの季節が一番旨いマナガツオの味噌漬け。。脂ののりも抜群。皮目を細かく切って食べやすくしている。この辺りの細やかな心遣いがご主人のいかつい顔と釣り合っていない(笑)

2013-01-17 19.59.34

お待ちかねの握りの始まり。まずはさより昆布締め。。。分厚い細魚がひねられて握られる。繊細なんだけど豪快。最初の握りで「おいしいねえ!」と声に出る。お酒をあっさり系の麦焼酎の水割りに切り替えて食すのが私流。

2013-01-17 20.07.30

続いてはこのお店のオリジナルの鯵のなめろう。かなり新鮮な鯵を細かく切って叩いて酒、醤油、ネギ、スダチで味を付けて握る。かなり美味しい。。。

2013-01-17 20.10.26

カマスの炙り。。香ばしくて味も深くてすとのどの奥に入っていく。ビジュアルでもわかるがこちらの寿司は素材が良く、それを丁寧に奇をてらわず極めて実直な素材感を生かした仕事は比類なき価値を創造する。

寿司は焼き肉と同様好みが激しいものであるが私はこの店が日本で価格とのバランスを含め最も美味しいと思う。

2013-01-17 20.13.47

きんきは皮目を軽く炙って肝と芽ネギを乗せたものである。とにかく美し過ぎる。このような美しい寿司が不味いわけがない。この店の寿司はすべて凛とした品格がある。魚も幸せであろう・・・

2013-01-17 20.18.08

締め鯖は蕪の甘酢漬けを巻いて頂く。あっさりして味の変化があって面白い。「手をかけて自然」と言う表現が一番適していると思う。

2013-01-17 20.22.25

鮑は大振りのものを柔らかく炊き込む。かなり時間と手間のかかる仕事で好物のエンペラの部分を選んで切り付けてくれる。この鮑だけ20個くらい食したいと思う逸品。シャリは空気を含んでフワフワしている。とにかく喉に入ったあとが軽い。

この店のもう一つの特徴は主人の顔面。。かなり怖い。15年前から変わらない。握っていないときは直立不動の仁王立ち。子供が見たら泣き出すくらい怖い。。でも話せば優しい。。このギャップが癖になる(笑)

2013-01-17 20.25.37

この店のスペシャリティーの車エビ。。シャリとの間にエビのミソを挟んでいる。食べやすさはもちろんこのビジュアルは深遠なる造詣が必要と個人的には思う。これだけでも彼の卓越した想像力とイマジネーション能力がわかる。

いろんな情報誌やグルメブログでこの店を様々な形で表現しているがすべて筆力不足でこの店のよさを表現してはいるもののピントがずれているものも少なくはない。

2013-01-17 20.31.26

雲丹はもちろん海苔なしでこの時期は北海道産。。甘すぎて悶絶する。

2013-01-17 20.34.57

ワタリガニの胴体部分の一番太い身を握る。。その上に内子を乗せる。。これも大好物なり。

2013-01-17 20.37.42

煮ハマもこの店のスペシャリティ。伝統的な江戸前とは違ってさっとボイルして出汁につけ込む。かなりのレア感と磯の香が秀逸。身の大きさにも驚く事必至。

2013-01-17 20.45.31

鰻は握りのような巻物のような感じ。蒸し焼きの鰻はフワフワ。。。。

2013-01-17 20.48.23

〆は野菜やエビや山芋などいろんなものが入った袱紗焼き。味の宝石箱とはこのことなり。コースはこれで終了なんだけどあと10種類以上はネタを用意されている。しかし食べ始めるときりがなくお腹が破裂するまで食してしまうのでこの辺で終了とする。

かなり入りにくい立地と店構えだが「まさる」という表札を探していってみてちょ。予約は必須。。

大阪市浪速区下寺2-3-10
TEL:06-6649-7227
営業時間:平日 17:00~翌2:00 日祝 17:00~23:00
定休日:水曜日


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