2016年11月

王様のスプーン

南森町の行きつけのカレー店。この辺りには聞く所によると50以上のカレー専門店が立ち並ぶ激戦区らしい。その中で本年で10周年を迎えるこちらのお店は界隈でも有名な繁盛店舗。ランチタイムはひっきりなしに客が入る。真夏の冷やしカレーは毎年テレビで紹介される名物商品。最近はガチインドやスリランカ系のカレーをあちこちで良く見かけるがこちらのカレーはスパイスはしっかり効いているけど界隈の会社員がスタンド形式でさくっと食べて帰れるような比較的スタンダードなもの。

メニューは
ブレーンカレー720円
鍋焼きスープカレー820円
ビーフカレー820円(王様のみ)
ハーブチキンカツカレー800円
辛口チキンカツカレー820円
季節の野菜820円
ミックスカツ930円
ヘレかつ1030円
など

プレーンのカレーは2つの味から選ぶ。看板商品の王様ベースはスパイスがっつり系。スパイス苦手の方はオニオンベースのマイルド系玉ねぎの優しい甘味。店主は40才過ぎと推測される、お店では「あっちゃん」と呼ばれる天海祐希系の女性オーナー。

この日はシーズナルメニューのスープカレー820円を所望する。
最初にフレンチドレッシングがかかったコールスロー登場。女性オーナーのちょっとした気配りが嬉しい。

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スープカレーは鍋焼き仕立てになっていてテーブルでグツグツと音をたてながら美味しそうな香りを漂わせる。スープの中で大きく鎮座するのはじゃがいもの塊。柔らかく煮込んでから一度油で揚げて更に煮込んでいると言っていた、その横にはカボチャと人参、鍋の底にはトロトロに柔らかく煮込まれた大きな手羽元が2本入る。

スープカレーのルーは王様カレーでカルダモンが強烈に効いたもの。クロブやコリアンダーの香りも後から鼻に抜ける。辛さはあまりないけどスパイスの刺激が頭皮に駆け上って額から汗が出る。小麦を使っていないのでどんどこ食べすすめることが出来る。チェーン店にはない上質感は丁寧な仕事の裏打ちであることは一口いただいたら判る。

食べ終わるとぽかぽかと身体の芯から温まっているのに気づく。これからの寒い季節にはドンピシャの逸品。近所には30分200円のコインパーキングがたくさんある。駐車料金を払っても行く価値はあると私は思う。梅田の百貨店のスタンドでこのカレーを提供出来ればいいのにな・・・と店主と笑って話す。12月から相生の坂越の牡蠣を使ったカキフライを出す予定らしい。

明日から師走か・・・・
大阪市北区西天満5-11-4
電話 06-6362-8028
営業時間 [月~金 ]11:00~15:00 17:00~21:00 [土]11:00~15:00
定休日 日曜・祝日


カテゴリー 西天満, 南森町 |

すし豊 11月

日曜日は早朝から夕方まで障がい者施設でボランティア。雨の中での重労働のあと、銭湯で汗を流して自宅で1時間昼寝をして嫁さんと口喧嘩してから表記の店を訪問。場所は阿倍野の王子神社の近くの路地を入ったところ。すぐ先には個性派カレーの「堕天使かっき〜」のお店。下町風情溢れまくりの昭和な感じのファザードと同様、店内も昔のドラマに出てくる大衆寿司屋そのまま。カウンター8席と小上がり2卓の店内。記録を調べると私も22年前からこちらに通っていることが判明・・・

昼ご飯が遅かったのでいつものようにコースではなく好きなものだけをアラカルトでいただく。寒かったので白鹿の熱燗とともに河豚皮とアンキモを所望。

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河豚皮は普通な感じ。日本酒をいただきながらぼそぼそと食べているとご主人が「鷺岡さん(私の本名)、最近あなたのブログ見て店に来る人が多いんだよ〜」と東京言葉でのたまう。棚からメモを出して客から聞いた私の名前と職業とブログ名を記したものを私に見せる。指名手配されてるようでビックリ。ご主人がメモを取っているということはそんなには嫌がっていないということであろうと納得する。

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酒蒸しされたアンキモも丁寧な仕事で上品な仕上がりで普通に美味しい。外国産の嫌な匂いは全くしない。甘めの熱燗と相性ぴったり。

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目の前のカウンタ−の水槽には川蟹がわんさか入る。季節によって中に入るものが異なる。蟹のあとは琵琶湖の天然もろこ。そのあとは稚鮎や鱧が泳ぐ。

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富山の島田一雄さんの獲ったもので10匹に1匹しかない大きな雌のみを仕入れると言っておられた。いわゆる松葉ガニのタグのようなものであろうか。川蟹の鍋は前日までの予約で仕込みにとても時間がかかるとの説明。

諸々の話を聞いていないのにご主人から詳しく説明いただく。何度もいただいているのに同じ話は毎回される。知らない振りをして「ヘー」とか言って話を聞く。まず生きた蟹を冷水で締めて失神させる。それをさばいて殻ごとミキサーにかける。それを裏ごして殻をとる。同じ事を3回くらい繰り返して丁寧に身だけを削ぎ落とす。手間をかけて取り出した生身を蟹味噌と卵のついた殻と一緒に鍋に入れて食す。

出来上がりのビジュアルは卵白のような感じ。蟹身は独特のコクと旨みがある。途中で殻や卵から蟹のエキスが出てきてゴボウや豆腐に蟹の味が移り出汁と相まって最高の滋味となる。上海蟹よりも味わいは上品(今年は上質な上海蟹は日本に入って来ないので最近は川蟹の相場も上がっているらしい)

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握りの扉は大阪湾のハリ烏賊。熟成感もあり独特の旨みがある。中に鋳込まれた胡麻の香りが口の中に広がる。塩とスダチを軽くあてているので甘味が引き立つ。

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脂がのりまくりでネットリした鯖の漬けは口の中で溶けまくる。あこうの昆布締めも味わい深い。〆ているので歯ごたえはないが後から甘みが来てそのあと旨味も広がる。刺し身にはそのままでも美味しい高級魚だが寿司には合わない。昆布締めにすることで魚の美味さが寿司飯を通り抜けることを防いでいる。

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しっかり締めた大きな小肌。コノシロのサイズ。これはこれで美味しい。日本酒ととても良く合う。

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カンパチは片面をしっかり炙って紅葉おろしでいただく。ビジュアルもとても美しい。焦げた部分の甘い脂が咥内にまとわりついてそれを日本酒で洗い流す。握りながらも魚の話や東京での修行の話など本当に愛想よく客の相手をされる姿に頭が下がる。出される料理が彼の説明でよりいっそう美味しくなるのは確か。2016-11-27-21-19-44

濃いめのたれでしっかりと煮込まれたハマグリは濃いめの煮詰めが更に上から塗られる。しかし見た目ほど辛くはない。蛤も東京で獲れるものが最高とされていて我々の業界用語で「場違(ばち)ハマグリ」と言われる九十九里や鹿島灘産の外洋性のものはハマグリではなくチョウセンハマグリと貝種が異なるのはあまり知られていない。スーパーで販売されているのは韓国・中国のシナハマグリ。三重でシナハマグリの種を輸入したものを畜養して国産として販売していることも多い。

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名残の鱧は脂がしっかり乗ってふわふわしてとても美味しい。東京の寿司屋では鱧はあまり見かけない。その逆で山口県の寿司屋では産地ということもあり必ず出てくる。条例で山口県の寿司屋は鱧を出さなければならない・・・と決められていると聞いたこともある。

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300gオーバーの大きな鮑を2時間煮込んで作る蒸し鮑。柔らかくて旨味たっぷりで寿司飯とも良く合う。提供する際にご主人が「ウチで一番柔らかい寿司ね〜!」と言いながら出される。この口上も約20年くらい聞き続けているのでほぼ物まねが出来る。(でもしない)

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もう一度鯖の漬けをいただいてから最後に軽く炙られて提供されるこの店のスペシャリティである烏賊の印籠詰め。ヤリイカを使用する江戸前の古い仕事。この仕事についての解説も3分くらいあり世間でよくあるイカめしとの異なりをこと丁寧に教えてくれる。烏賊の胴体とシャリの間に白子が入り、両端はイカの卵が入る。レアに火入れされて甘味を増した烏賊の身とともに卵と白子の味と食感の異なりを楽しむことが出来る。

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酒が残ったので秋唐墨を出してもらう。気分はフレンチのフロマージュのようなものか。当然自家製で手前からヒラメ、鮎、ボラの稚魚。卵の種類は季節によって異なる。まろやかな仕上がりのために冷蔵庫で塩漬けして冷蔵庫で干して冷蔵庫で保管。ここでご主人の唐墨談義が始まる・・・・気楽に美味しい寿司を食べて、価格もリーズナブル。あまから手帳編修の「関西寿司100選」のトップを飾っています・・・

ご主人の 名前は安田豊次、だから「すし豊」。いい店です。。

大阪市阿倍野区王子町2−17−29
電話:06-6623-5417
営業時間:17:00~24:00
定休日:木曜日


カテゴリー 松虫, 寿司 |

出張屋台寿司 徳太郎

過日に私どもの会社が南海電鉄様とコラボして阪堺電気軌道株式会社(俗称 チンチン電車)の現存する最も古い161型(昭和3年建造)の電車を使用(冷房はついていない)して臨時寿司店を開催。せっかくなので今回は友人と一緒に客として相伴させていただく。

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現在21のチンチン電車が全国で営業運行している。こちらの会社は1897年(明治30年)に前身の大阪馬車鉄道株式会社が設立されその後に大阪電車鉄道株式会社、浪速電車軌道株式会社と名前を変更され今に至ると聞き及ぶ。

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私どもの出張寿司事業部の「出張屋台寿司 徳太郎」のスタッフが車両内の設営から運営まですべて行なう。出張寿司の事業部はすきま産業なんだけど一般企業での懇親会や個人宅でのメモリアルディナーを中心にTPOSに合わせた内容と価格で大好評。

特に介護施設での出張現場では嬉しくて久しぶりのお寿司に号泣される利用者や板前君と記念撮影会が始まったりと毎回大好評いただいている。最近は取り扱い件数がうなぎ上りで若い職人の育成が急務となっている。

そんな話はどうでも良くてこの日のイベントでお客様が支払う価格は乗車賃とお酒3本(多過ぎ・・・)と通天閣の入場券を付けて税込5000円。(*南海電気鉄道の国内旅行事業部が旅行事業として企画)

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我孫子道駅の車庫内で出発2時間前から設営して最後に食材を運び込んでそこから出発駅の恵比須町に移動。車庫の中は鉄道ファン垂涎のレアな車両がたくさん現存。今は廃車となっている1952年(昭和27年)に帝國車輛工業で資材輸送用および救援用として製造された無蓋電動貨車デト11形11も発見(撮影許可はいただきました)

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この日の握り手はお店の2番手寿司職人の東条君。電車の中央に簡易板場を作成。お客様の「電車の中だからこんなものだろう」という期待を上回るような設えと内容を限られたコスト内でどこまで提供出来るかがポイント。

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先付けは蟹酢。日本海で獲れた活ズワイ蟹のお腹の部分を3杯酢につけたもの。あしらえは浜防風と若布の寒天寄せ。量が物足りないけどこれがコストを考えるといっぱいいっぱいなんですよ・・・という料理人の弁。

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この車両はドアが真ん中開きなのでお客様が乗車するときに目に入る最初の印象をもっとも重視。木製車両なのであらゆる部分を養生しながら使用させていただく。勿論火気は現厳禁。

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寿司は4回に分けて提供
・泉州産ハリイカ
・高知産本マグロ赤身漬け
・明石産の煮蛸
・愛媛産鯛の昆布締め
・愛媛産縞鯵
・軽く締めてたたきにしたノルウエー産サーモン
・笹の上で炙った泉州産煮穴子
・玉子焼き(少し甘め)
・小鉢に入った北海道のバフンウニといくらの醤油漬けのミニ丼
・北海道産の甘エビ
・愛媛産カンパチ
・泉州産鯖の昆布締め
・かんぴょう巻

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各駅に停車しないので我孫子道駅にあっという間に到着。そこで折り返して再び恵比須町駅に戻る。正面にはハルカスが見えてとても幻想的な風景。電車の揺れとアルコールの酔いで頭がフラフラになってくる。周りの方々と楽しくしゃべって食べて飲んでたらあっというまに終着駅に到着。

相伴させていただいた方々からは思っていたよりも楽しくて美味しかったという声を聞いてスタッフ共々大喜び。寿司職人との記念撮影や次回開催のリクエストもいただきながらイベント終了となる。


カテゴリー 北加賀屋, 住吉大社, 寿司 |